017 『雨宿り』 [イメージ小説『雨宿り』]
雲ひとつない真っ青な空が広がっていたのに、
下校時刻に近づくにつれて、
濃い灰色の雲が、空を侵してきていた。
そして、雨。
雨足は強くなって行った。
「どうしよう、傘持ってきてないよ・・」
そんな不安そうな言葉が、あちらこちらから漏れていた。
「きゃー・・」
ついには雷も、稲妻を落とした。
玄関で生徒達が右往左往しているなか、
雨田は鞄から、折りたたみ傘を取りだし、
ささっと広げた。
黒い空を確かめるように見上げながら、
傘を差して玄関から延びた庇の下から、
土砂降りとなった雨の中へ、雨田は出て行った。
雨田が二三歩歩きだした、その時、
「あー待って、雨田君」
女子の声が雨田を追ってきた。
振り向くと、
影木が雨に抗うかのように身をすくめ、走ってきた。
「ごめん、傘に入れて」
雨田に肩をぶつけるように、影木が傘の下に来た。
「え?」
驚いた顔を見せる雨田に、
「駅まで、いいでしょ?」
と、肩と肩が触れそうなくらいに影木は並んで、言葉を続けた。
「う、うん・・・」
それから駅まで、傘にぶつかる激しい雨音以外は、なにも聞えてはこなかった。
雨田は、傘をいくぶん影木の方へずらした。
影木の肩に当たる雨粒から、かばうように。
「雨田くん、ありがとう」
駅に着き、影木は雨田にそう言うなり、傘の下から飛び出し、
改札へと走って行ったのだった。
雨田は、影木を目で追うこともなく、傘の雨粒を払っていた。
下校時刻に近づくにつれて、
濃い灰色の雲が、空を侵してきていた。
そして、雨。
雨足は強くなって行った。
「どうしよう、傘持ってきてないよ・・」
そんな不安そうな言葉が、あちらこちらから漏れていた。
「きゃー・・」
ついには雷も、稲妻を落とした。
玄関で生徒達が右往左往しているなか、
雨田は鞄から、折りたたみ傘を取りだし、
ささっと広げた。
黒い空を確かめるように見上げながら、
傘を差して玄関から延びた庇の下から、
土砂降りとなった雨の中へ、雨田は出て行った。
雨田が二三歩歩きだした、その時、
「あー待って、雨田君」
女子の声が雨田を追ってきた。
振り向くと、
影木が雨に抗うかのように身をすくめ、走ってきた。
「ごめん、傘に入れて」
雨田に肩をぶつけるように、影木が傘の下に来た。
「え?」
驚いた顔を見せる雨田に、
「駅まで、いいでしょ?」
と、肩と肩が触れそうなくらいに影木は並んで、言葉を続けた。
「う、うん・・・」
それから駅まで、傘にぶつかる激しい雨音以外は、なにも聞えてはこなかった。
雨田は、傘をいくぶん影木の方へずらした。
影木の肩に当たる雨粒から、かばうように。
「雨田くん、ありがとう」
駅に着き、影木は雨田にそう言うなり、傘の下から飛び出し、
改札へと走って行ったのだった。
雨田は、影木を目で追うこともなく、傘の雨粒を払っていた。
2011-05-05 00:40
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